これを私に教えてくれたのが
私のライフステージの変化でした。
30歳 医師6年目になり、自分の仕事も効率化されてきて
自分の時間ができ、
人生の組み立てを意識するようになりました。
結婚や将来のことも考え始め、どの程度投資に当て、
いつ家を購入し、いつ結婚し、親の介護はどうするか。
そんなことを考えているときに、
これって患者さんも同じだよな!!
って当たり前の事実に気づきました。
何事も少し勉強すると見えてくる世界も変わり、
その患者さんの
年齢、家族構成、職業や収入、価値観や死生観を
去年に比べて10倍くらい意識がいくようになりました。
私たち医師の仕事は患者さんを
問診 → 診察 → 診断 → 治療 → 帰宅
に導く事です。
研修医時代から今まで、
至極単純に見えるこの作業がいかに難しいものか?
と苦悩し、やりがいを感じ努力し続けてきました。
そのかいもあり、最近板についてきたなと自負しておりました。
一般に不動産投資では出口が重要と学び、
これは医療に共通するな
と直感を感じました。
おそらく医療関係者の人は理解してくれると思いますが、
医業に一番難しいところは出口戦略
つまり治療法の決定、帰宅先、方法の決定が難しいのです。
人工呼吸器で管理された
見込みのない患者の治療をどこで撤退するか。
治療途中で認知症を発症してしまった
副作用に苦しむ患者の抗がん剤をいつまで続けるか、
また自宅へ返すのか施設に入居させるのか。
末期癌と診断された
グルメな患者の糖尿病管理をどこまで厳しくやるのか。
普通の倫理観をもった医療者なら
間違いなく一度は悩んだ経験があるはずです。
JONSENの4分割に従い全症例評価を行うべきですが、
働き方改革の波には逆行します。
(私は私なりにはしっかりとやっています。。)
医学的適応 | 患者の意向
—————————————-
人生の質 | 周囲の状況
これらを完全独立させて考慮し
医療スタッフ、患者さん、患者家族で
話合い患者さんにとって最適解を導き出すというものです。
実はこちらを語る上で、より深い疾患への統計学的理解が必要になります。
少し古いデータにはなってしまいますが一般的に大腸癌STAGEⅣの5年生存率は20%程度、5人に1人しか生存しません。さらに何も治療を行わなければ1年以内に概ね亡くなってしまいます。そのような医学的背景があって、患者がもともと延命を望んでいない、老老介護の状態である。肝臓の転移により、お腹が張って本当に辛そう。
この状況全てを踏まえ、話合い彼に手術をし、化学療法を強く勧める医者は少数でしょう。
エンドステージの患者のお話をしましたが、普段生活習慣病を診療する私は同じことを考えています。例えば、
医学的状況: 糖尿病と30歳男性、一般の平均余命50年(日本の男性の平均寿命)
患者の意向: 食べることが好き、あまり糖尿病のことが分かってない
QOL : しっかり治療しなければ10年後や20年後合併症で苦しむリスクが高い
周囲の状況: 養うべき家族がいて一家の大黒柱。
という患者に十分な説明をせずに「まあ大丈夫でしょう、食べるのが好きならしょうがない」と患者教育する医師はやばい医師です。
医学的状況: 77歳男性 大腸癌 STAGEⅣの大腸癌
患者の意向: 無理してまで長生きしたくない
QOL : 治療によって著しく体力低下のリスクあり、余命の短縮させるリスクが高い
周囲の状況: 独居という背景
の患者に「1日1400kcalまでって言っただろ!!」
と罵倒する医師がいればそれもまたやばい医師です。
私の頭の中で作り上げた、シンプルな患者例のみ提示しましたが
医学的状況: 70歳男性 大腸癌STAGEⅢ(手術できる) 狭心症(手術リスクが高い)
患者の意向: 本人は手術が怖くそこまでしたくないが迷っている
QOL : 手術したら回復の可能性はあるがリスクが高い
周囲の状況: 相続の問題や、複雑な家族構成、家族は手術を望んでいるものも希望していないものもいる
このような状況なら皆さんなら、どういった最適解をみつけていくでしょうか?
患者様、家族への病状説明 → 治療の選択肢の提示 → 今後の患者の予測される運命
その際にかかる医療費や、残された家族の生活(別口での説明になると思いますが・・)
これを総じて説明する際に、内科医は最も勉強が必要であり、その知識は常にupdateされなければならない。患者の家族構成、死生観の把握、年金や保険、資産運用、相続や政治も含めてある程度の理解する。より一層に統計学的知識の勉強や最新治療を学ばなくてはならないと再確認した30歳の冬でした。
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